90年代のおたくたちへ

大手メディアが求める「オタク像」には違和感を覚える
大手メディアが求める「オタク像」には違和感を覚える | ガジェット通信

とある批評家が『おたく』がカタカナの『オタク』になっても
この言葉を背負った『宮崎勤』が消えることがないと言ったのを覚えている。

1 オタクというキャラクター

オタクという言葉は『ひきこもり』『ニート』『ロリコン』『非モテ』等のマイナスイメージと結び付かれて流通した。
デで服装がダサい人もオタク、アニメ観ている人はオタク、ゲームをしていてもオタク。マスコミは嫌いなタイプの人間をオタクにすればいいらしい。
マスコミは視聴者がオタクを見下して笑えばいいと思っている。
少年犯罪が起きれば犯行理由に「オタク」を付ければ解決するらしい。
負のイメージを突き詰めた先た結果、非実在オタクを生み出す事になった。

2 90年代のオタク

90年代のオタクの先輩は厳しかった。
コミュニティーが閉鎖的で、一般人へのルサンチマンで一杯だった。
にわかの僕がアニメのセリフの引用を誤ると、顔を真っ赤にして激怒した。
新世紀エヴァンゲリオンの使徒を間違えると人格否定された。
データベース的な自慢話しかできなくて、オタク知識が彼らのアイデンティティーだった。高校では「濃い」人達と言われて女の子達に嫌われていた。
容姿と言動そのままの「オタク」であった。しかし。同じ仲間の繋がりは広くて強かったのを覚えている。
僕と彼らとのつながりは卒業で途切れてしまった。
僕はにわかで偽物のオタクだったからだ。

2 オタクを演じるオタク

自称オタクに「オタク」じゃないと宣言したら激怒された。
「なぜオタクと認めないのだ」
「議論する!!真剣10代しゃべり場だ!!」
「いい加減認めろよ」

彼は「オタク」であることがアイデンティティーだった。
それを他人に押し付けて否定すると怒りだしたのだ。
部活の合宿に据え置きゲーム機を持ち出して、女子から嫌われていたのも彼だった。
嫌われること、煙たがれる事が彼の行動理由だ。
また。友人間で「ロリコン」を自慢して性癖を晒すのが個性と思っていた。
しかし、彼は「オタク」を自称しているだけでオタク知識は知ったかぶりが多かった。
彼は偽物だった。オタクを演じるオタクだった。
嫌われるイメージを演じる事が唯一無二の個性だと思っていたのだ。

3 90年代のオタクたちはどこへ行った

彼ら「オタク」はどこへ行ったのだろう。
21世紀になり、ネットが普及して誰でもSNSでつながり情報が共有できるようになった。
Wikipediaが台頭して知識自慢のオタクの存在理由が消えていった。
スマホのお陰で知ったかぶりのオタクを駆逐できた。
嫌われることが個性と思っていたオタクたちは秋葉原から消えていった。
90年代のオタクらしいオタク達はTVしか登場しなくなったのだ。

ネット普及によって、彼らが激怒した『にわかオタク』が登場して『オタク』を自称するようになった

4 90年代オタクの行き先

かつて「オタク」であることにアイデンティティーを持っていた人達はどこへ行ったのか?
就職できた者は、就職活動を通して社会人になっていった。ネットのお陰で我慢して嫌いな人に情報を得る必要が無くなった。兼業のオタクとして、仕事と両立できるようになったのも大きかった。

嫌われるイメージを演じていた「オタク」は「ひきこもり」になって表舞台から消えていったのだろう。

5 21世紀になって

オタクがカジュアルな言葉になって、趣味で人に嫌われない日はきっと来る。
新しい世代のオタクは『宮崎勤』のイメージを背負う必要は無く、趣味に生きて欲しい。
90年代のオタク達は負のイメージと共に消えていくのだから。