RPGツクールのせいでニートになった 最終回 そして、ニートへ

僕は高校卒業後、大学に入学した。
大学生活は、単位とゲームしかなかった。
友人も作らず、サ−クルにも入らず、アルバイトもしないで閉じこもっていた。

RPGツクール2000でゲーム製作をしようとしたが
高校時代の挫折が原因で最後まで完成する事はなかった。

夢を失った元オタクは、ほかの趣味や生き方を見つけることができなかった。
僕の大学4年間は何も得ることもなかったし、失うものもなかった。
すべては、なるべくしてなった。

その後の生活は失意の連続であったし、何も変わることがなかったので
書き残すことは一つもない。

就職活動も自分の将来を見出せなくなったのが原因で、新卒で就職できなかった。
そして、僕は無職になった。

結局、ゲーム製作の後で自分を見失い、夢を見失った。
他の可能性の模索を大学ですべきだったのだ。
自分を振り返るべきだったのだ。

友人Bに「すべてをゲーム製作のせいにしている」と言われた。
もちろん、それは僕も自覚はしていた。
こんなものは鬱病ですらない。

現実的なものとして趣味と自分を見直す必要があった。
だが、堕落した僕はゲームを否定しておきながら
ゲームをして、漫画を読んでいた。

あの大好きだったゲームに、かつてのような期待感と躍動感を
感じる事ができなくなった。
青春時代に取り逃したものが綺麗で、今の自分が惨めだった。

変化を求める自分と永遠で閉じている趣味の世界は、対立する関係だった。

無職の地獄が目の前の現実である。
現実から目を逸らしても、あの1と0の世界に戻ることができない。
大事なものを取り逃がすことになったのだから。

何かを得るためには、別に生き方が必要であった。

なぜ、こんな文章を書くのか、疑問に思われているだろう。
これは、現実を失った人への警告である。
誰も後悔をさせたくないのだ。

僕は、親や先輩のように普通の生き方をしている人を思い出した。
彼らは、長い生活のなかで、泣いたり、馬鹿にされたり、失敗したりしながら、懸命に生きてきた。

僕の親は、普通の自分に耐えてもきちんと親をやっていた。
退屈で普通の自分に誇りを持っていた。

部活の先輩は高校卒業後に看護学校に入って看護師になった。
それが、当たり前と言っていた。

人を見下して普通から逃げて、
電子世界に閉じこもった僕が嫌いだった。

膿のようなニヒリズムが僕を蝕んでいる。
世界の興味を失う。外部を皮肉る。他人を卑下して痛めつけて弄ぶ。
つかの間の優越感に浸る。

自分より弱い者をつくり、強い者に媚びて暴力によって解決をしようとする。
病んでいると嘘を吐き、偽善を働く。

振り返れば、高校時代のオタクコミュニティーは煉獄だった。
僕らは、承認要求をゲーム製作に託していた。
僕らはゲームが好きじゃなくて、ゲーム製作で自意識をぶつけ合っていただけだった。
生産性など初めからなかったのだ。

振り返ると、僕ら感情の代行をオタク趣味に委ねていた。
感情は失うと、自己防衛しか働かなくなる。
自己防衛は、暴力に走らせる。
そうして、自己防衛をする者同士のコミュニケーションは煉獄となった。

プログラマーを自称して、自慢話しかしない者。
キャラクターデザインをしたいと言いながら、セックスの話しかしない者。
ゲーム専門学校に入りながら、他人のゲームの批判しかしない者。
他人の可能性を潰す事しかできない者。

そいつらの末路はいずれも惨めなものだった。

彼らに、ゲームやアニメをやめてほしいと懇願しているわけではない。
「どうか、自分をつまらない趣味に受け渡すのをやめてください」
と言うだけだ。

ゲームやアニメに自分を預けないでほしい。

僕らは青春時代にそれを預けてしまってから、過ちを犯した。
自己防衛に走り他人を思いやる事を忘却した。

基礎レベルの他者の認識が歪み、他人との間に黒いフィルターがかかる。

僕の黒いフィルターが誰かを傷つけるのが悲しい。
僕の友人たちだけは、黒いフィルターをつくってほしくなかった。

黒いフィルターが可能性を消し去る前にフィルターを捨てほしかった。
脈々と流れる感情を恥じてはいけない。

ニヒリズムに走って自滅するのは僕だけで十分だ。
空白の時代を生きるため、僕のようなくだらない人間を踏み台にして
自分をつくってほしい。まだ、間に合うのだから。

                                                                                                                      • -

※ 『RPGツクールのせいでニートになった』は
2003年〜2004年に友人に送ったメールを
加筆修正したものです。

現在の僕は紆余曲折の末に社会人をやっています。

10年前の僕の挫折が、真面目系クズそのものだったので
その実態を伝えるために転載しました。

ニートになる原因は人それぞれだと思います。
就職にむけて少しづつ進めば必ず就職できます。

僕がニートを脱出するきっかけになったのは、
苦楽を共にした友人が助けてくれた事でした。

現在の僕は、当時の友人に対して感謝の言葉しかありません。

結果的に、友人を批判する文章になってしまった事を
この場を借りてお詫び申し上げます。

当時の友人は今でも大切に思っております。

RPGツクール2000でエターナルになった
ウィズダムブック2』を完成させる事が恩返しと思っております。